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フィンランド+バルト三国+ベラルーシの MaaS 体験記 #Zaim

こんにちは!Zaim で代表をしている @unicco です。

私は最近、年に一度くらいのペースで同業の友だちと海外に行き、観光しつつ現地のサービスを見て回ることを趣味にしています。その一環として今回、フィンランドとバルト三国、そして足を伸ばしてベラルーシで MaaS(Mobility as a Service)を体験してきました。あくまでもいち旅行者の視点として、どんな風だったのかを共有してみたいと思います。

主なルート

(1)フィンランド:ヘルシンキ
(2)エストニア:タリン
(3)ラトビア:リガ
(4)ベラルーシ:ミンスク
(5)リトアニア:ヴィルニュス

なお友だちと一緒に見て回ったのはフィンランドとエストニアで、あとは一人旅でした。

(1)フィンランドのヘルシンキ:Whim, Voi, City bikes

Whim

ヘルシンキに到着して、まず使ったのは Whim という MaaS アプリです。MaaS Global というベンチャー企業が提供している、いわば「ワンストップ MaaS サービス」でした。

日本のサービスで説明すると「切符にもなる Google Maps」がイメージに近そう。行き先を決めると「STRAT TRIP」ボタンから切符が買えます。クレジットカードまたは Apple Pay が使えました。

以下が切符にあたる画面です。画像だと表現しきれないのですが、以下の黄色と紫色の上にある白い線がぐるぐる動いていました。

はじめは一体、何のためのアニメーションなのだろうと不思議でしたが、どうも悪用防止のための機構のようでした。画面キャプチャをしても、アニメーションがなければ不正だとバレます。

さらに、時間帯によっては背景色も変化していました。

トラムなどの運転手は、自身の端末側で「今は、この色の組み合わせ」というのが分かるようになっていて、すぐに正しい切符かどうか判断できるようにしているのかもしれません。どなたか正解をご存知なら、教えてください…!

色の違いは遠目でも見分けられるので、良い仕組みだなーと思いました。

ただ、ここまで説明しておいてなんですが、トラムや鉄道で画面の提示を求められたことは一度もありませんでした。キセルしようと思えば、し放題…。定期的に人海戦術によるガサ入れがあるようですが、まだまだ発展途上なのかもしれません。

Whim のアプリで一番いいなぁ!と思ったのはカレンダーとの連動です。空港で起動すると、Upcoming のところに今日の予定が表示されていて、ワンタップで宿泊予定のホテルまでの経路が分かるようになっていました。

公共交通機関だけではなく、タクシーも候補として挙げられています。

日本にもあると便利そう。三井不動産が 2019 年 4 月に Whim を展開する MaaS Global 社へ出資したようです。

VOI

スウェーデンのスタートアップが展開する「VOI」の電動キックスケーターもよく見かけました。基本的には米国の LIME などと同じで、エリア内ならどこでも乗り捨て OK な仕組み。

かなり台数は多く、市内で乗りたくなったら容易に発見できるほどでした。

ただ、ヘルシンキは石畳が多く、また歩道もボコボコなので、乗るときは決死の覚悟でした…。また 10 分間で 3.75 ユーロと、だいぶ高い!なので、実際に乗ったのは 1 回だけでした。

VOI はアプリ含め、サービス全体に親しみが湧く設計になっていました。初めに乗った端末がうまく動かず、返金の問い合わせをしたときの返信も、やたらテンションが高くてかわいかった。

City bikes

一番、気軽に使った移動手段は自転車でした。電動は付いていないものの、24 時間、最長 30 分が乗り放題で 5 ユーロと安く、地元らしき人も多く活用していました。

ただ、自転車のデザインだけは、あらゆるものがスタイリッシュだったフィンランドっぽくなかった…。

意外だったのは Uber などのタクシーアプリはあまり使われてなさそうだったこと。Uber でも後述する Bolt でも、走っている車はほとんど見つかりませんでした。

ヘルシンキ全般、すみずみまでおしゃれで旅行者に優しい街でした。デザインの美しさと UX は同居できる!

(2)エストニアのタリン:Bolt

電子政策が有名なエストニアでは、政府公式のショールームに行くつもりでしたが、日程的に休みの日で行けずじまいに…。

現地に移住した知人に会おうとするも、ちょうど日本に帰国中とのことだったので、ほぼ普通に観光していました。

タリンの移動は、タクシーアプリの Bolt(旧名 Taxify)か徒歩でした。

トラムもありましたが、Bolt が安くてたくさん走っていたので、使う機会はないままでした。住民の場合は、トラムが無料らしい。

Bolt は、普通にタクシーを拾う半額くらいの値段です。

ヘルシンキのようなシェアサイクルや電動キックスケーターは、見かけませんでした。タリンは旧市街地を中心に観光色が強い街だったので、景観を守るために禁止されているのかもしれません。

余談ですが、ご飯がとってもおいしかった。

(3)ラトビアのリガ:Sixt

エストニアから南下したラトビアのリガは石畳が多く、ところどころに Sixt というシェアサイクルステーションがありました。

ただ、実際に自転車が停車している場面にはついぞ出会わず…もしかしたら廃止されたのかもしれません。本来は、以下のようなアプリ経由で自転車が借りられるようです。

トラムは走っていたものの、小さい街なため使うことはありませんでした。なお Bolt はエストニア同様、たくさん走っていてすぐにつかまります。

大きな公園があり、地元の方たちが水着でのんびり日光浴をしていました。特筆すべきような観光名所はなかったのですが、時間がゆったりと流れていて滞在する楽しさがある街でした。

(4)ベラルーシのミンスク:Yandex.Taxi

実は一番、楽しみにしていたベラルーシ!周りに行ったことがあるという人はおらず、入国方法によってはビザも必要、欧米から「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれているルカシェンコ大統領が統治する国…という観光地としての人気がなさそうな条件だらけ。だからこそ、行ってみたかった。

どれも建造物が猛烈に大きくて、だだっ広くて、見たことのない景色で、歩いているだけでもワクワクしました。これは中心地にあるケンタッキーフライドチキンの店舗。

交通事情としては、地下鉄とタクシーが主でした。タクシーは数年前まで Uber が進出していたようですが、いまはロシアの検索エンジンサービス「Yandex」が提供する Yandex.Taxi のみが使えるようでした。

市内であればだいたい 5 分以内に呼べました。およその道の混雑も分かるので便利。Uber などとは違い、車のナンバーは分かるものの、ドライバーの写真や評価は見えないようになっていました。

乗車前・降車時に 15%までチップが払えます。

シェアサイクルや電動キックスケーターはなかったものの、街全体が広大なので、あればとっても嬉しいですね。

なお日本以外でよく見かけるメイソウ、ミンスクにも進出していました。そして今たまたま調べたら日本にも数店舗できてるんですね…!

ベラルーシもキャッシュレスが進んでいるようです。私が入った街の中心地のレストランや小売では、すべてカードで決済できました。

(5)リトアニアのヴィルニュス:CityBee, Trafi

(ゼルダで見た風景)

最後に訪問したヴィルニュスが、最も電動キックスケーターが普及しているように見えました。

初乗り 0.5 ユーロと、ヘルシンキに比べてだいぶ安い!石畳が少なく、歩道も平坦で乗りやすいため、地元の方らしき人たちもめちゃ活用していました。

エリア内はどこで乗り捨てても OK。深夜早朝に回収され、充電してメインスポットに集められているようでした。

電動キックスケーターだけでなく、自転車や車、さらにはトラックの時間貸しも。車は車種によって価格がだいぶ異なりました。

シェアサイクルもありましたが、どうしても iPhone からユーザー登録できず断念…。ただ CityBee が手軽すぎて、あまり使われていないようでした。

そして、この時点で初めて Whim のようなワンストップ MaaS サービス「Trafi」の存在に気づきました。タリンやリガでも使えたっぽい。

これも非常に便利でした。リアルタイムにトラムの走行位置が分かります。

経路は公共交通機関のみならず UberX や独自で展開する Trafi Go によるタクシー、CityBee と連携したカーシェアも提案してくれます。

トラムのチケットは以下のような画面でした。QR コードの周りの緑の線がアニメーションしていて、Whim の不正防止と同じ効果を狙っているように見えました。

見学に訪れたヴィルニュス大学の講堂でオーケストラの練習に遭遇したり、ミサに立ち会ったり、普段なかなか出会わない経験ができて大満足。

感想

決済

今回の旅行で現金を使わなくてはならない状況になったのは、教会への寄付と、ヴィルニュスやミンスクで中距離バス内でチケットを購入しようとしたときだけで、あとはすべてクレジットカード決済でした。

AliPay 対応の店はいくつかありましたが、欧州独自の QR 決済は見当たりませんでした。また、当然のことながら PayPay や LINE Pay といった国産 QR 決済は、どこも未対応。もちろんサービスが始まったばかりなので、今後、国外でも使えるようになるかもしれません。クレジットカード以上に広く使えたり、国内であってもインバウンドの方が簡単に決済できたりするような基盤になると、いちユーザーとして継続的に利用するんじゃないかなと感じました。

経路検索と切符

訪れた街はどこも、現地で使える MaaS アプリを一つインストールすれば、移動に困ることはない設計になっていました。

ひるがえって日本はどうだろう…と考えると、都市部においては  Suica(交通 IC カード)と Google Maps を併用すれば、ほぼ Whim などと同じ体験が得られそう。Suica は発行や払い戻しの手間が面倒でしたが、今秋にはそうした手続きが簡易になるインバウンド向けのカードが出るとのこと。敷居が下がりそうですね。

電動キックスケーター

中国では下火になっているようですが、訪れた国々、特にヴィルニュスでは市民に根付いているように見えました。日本では法律上、原付と同じようにナンバープレートやヘルメットが必須、公道走行が前提で、気軽に乗れる環境にはなりづらいのかもしれません。

一方で福岡市では、海外の動向を鑑みつつ国内の環境を改善できないかと、実証実験が始まるようです。

さてさて、次はどこに行こうかな!

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